インタビューで相手から話を引き出すコツ|質問リストにない「いい話」を拾う方法
インタビューで相手から話を引き出そうとすると、「オープンクエスチョンを使う」「深掘り質問をする」といったテクニックに目が向きがちです。
もちろん、そうした方法を知っておくことも大切です。
でも実際に取材をしていて私がそれ以上に大事だと感じるのは、用意した質問をうまく投げることより、相手が話した言葉をきちんと拾うことです。
相手本人は何気なく話しただけなのに、「それ、もっと聞きたい」と掘ってみると、急にその人らしいエピソードが出てくることがあります。
逆に、質問リストを予定どおり全部消化しても、Webサイトやほかの記事ですでに読める話しか聞けなければ、その取材だからこそ書ける記事にはなりません。
私は地域の店舗や施設、観光関連など、普段インタビューを受け慣れていない方を現地で取材することがあります。
この記事では、そうした取材で私が実際にどう話を広げているのかを紹介します。
インタビューで話を引き出すには、質問より「相手の答えを聞く」

取材前には質問を用意します。
ただ私は、質問票を上から順番に読み上げるようには進めません。
相手が話した内容の中に気になる言葉が出てきたら、予定していた次の質問ではなく、その言葉について聞くことが多いです。
このように、あらかじめ質問やテーマを用意しながらも、相手の回答に応じて質問を変えたり、さらに詳しく聞いたりする方法は、インタビュー調査でも使われています。
質問リストは必要です。
でも、リストを消化することが目的になると、目の前の相手が出してくれた面白い話を逃してしまいます。
取材前は店やサービスだけでなく「話す人」について調べる

私は取材前に、お店やサービス、施設の基本情報だけでなく、誰に話を聞くのかも可能な範囲で調べます。
個人のオーナーさんなどであれば、公開されている過去のインタビューやSNSを見ることもあります。
そこで見ているのは、
- 何が好きなのか
- どんなことを大切にしているのか
- どんな思いで今の仕事をしているのか
といった、その人自身のことです。
ただし、調べた内容をこちらから先回りして話すためではありません。
普通に取材を進めていて、事前に見ていた「その人が大切にしていること」につながる言葉が本人から出てきたら、そこで少し深く聞いてみます。
私にとって事前調査は、答えを知っておくためというより、大事な言葉を聞き逃さないための準備に近いです。
ただし、こちらが期待する回答へ誘導しないことは重要です。インタビュー調査に関する公的な資料でも、特定の答えを「正解」のように示す質問は避けた方がよいとされています。
相手の「熱量がある言葉」が出たら、そこを拾う

では、相手の回答のどこを深掘りするのか。
これは正直、私もかなり感覚で判断しています。
ただ、一つわかりやすいのは、相手自身が強調している言葉です。
「これが大事なんです」
「こういう思いがあって」
というように、その部分だけ熱量を持って話すことがあります。
そういうキーワードが出てきたら、私はそこに食らいつきます。
また、取材相手がその他の話と比べて、嬉しそう・楽しそうな表情で話している部分もいい記事にできるヒントが隠れている可能性が高いです。
予定では次の質問へ進むところでも、その話についてもう少し聞いてみます。
取材に慣れていない方の場合、最初から自分の経験を順序立てて話してくれるとは限りません。
私が現場で感じるのは、話すことがないというより、何を話せばいいのかわからない人もいるということです。
だから短い回答だけを見て、「この人からはあまり話が出なそう」と判断しないようにしています。
本人が流した小さな話が、一番面白いこともある
以前、観光関連の現地取材で、ある職人の方に話を聞いたことがあります。
その方はガイドやインタビューに慣れておらず、もともと話すことが得意そうな方でもありませんでした。
ところが過去の仕事について聞いていると、職人同士で競い合ったことがあって面白かった、という話がぽろっと出てきました。
本人はそこで話を広げようとはせず、そのまま次へ進みそうになりました。
でも私は、その話が取材の中で一番面白いと感じました。
そこで、
「その話、もっとないですか?」
という感じで聞いてみたところ、そこからかなり話してくれたんです。
ここで大事なのは、取材相手が大きな話として提示したものだけが、記事にとって重要とは限らないということです。
本人が何気なく流した一言でも、外から聞くとその人らしさや現場の様子がよく伝わることがあります。
「今の話、面白いな」と思ったら、予定にない話でも少し掘ってみましょう。
「具体的には?」を繰り返すより、普通の会話として聞く
深掘りするときに「具体的には?」「なぜですか?」と聞く方法はあります。
でも私は、決まったフレーズを機械的に繰り返すというより、普通の会話として気になったところを聞いています。
感覚としては、友達と話していて、
「え、それ面白い」
と思ったときに続きを聞く感じに近いです。
実際、先ほどの職人の方にも、整った深掘り質問をしたわけではありません。
「その話、もっとないですか?」
というくらいの聞き方でした。
大事なのは、質問の型を当てはめることより、相手の答えを聞いて、自分が本当に気になったところをもう一度聞くことだと思っています。
インタビュー調査でも、最初に決めた質問だけでなく、相手の回答に応じて追加で質問し、さらに詳しい話を聞く方法が使われています。
質問予定から外れても、面白い話なら追う

取材には時間がありますし、記事を書くために必ず聞かなければいけない情報もあります。
だから、何でも脱線すればいいわけではありません。
ただ私は、記事として面白くなりそうな話が出たら、予定していた質問から外れて聞くことがあります。
特に何度か取材を受けている企業や店舗では、決まりきった流れで質問を続けるだけだと、ほかの記事と似た内容になってしまうことがあります。
それより、
「実はこういう話もあるんだよ」
と会話の途中で出てきた話の中に、事前に調べても見つからなかった情報があれば、私はそこを大事にします。
公開情報には出ていなかった、その人だから話せる内容が取れれば、記事としても面白くなるからです。
インタビューに関する研究でも、あらかじめ用意した質問だけに縛られず、関連する興味深い話が出てきた場合には、その話をさらに聞いていく方法が示されています。
話を引き出すには「空気」が一番大事

地域のお店や施設などで普段あまり取材を受けていない方に話を聞くとき、私は特に空気を大切にしています。
結局、話してもらうには空気が一番大事だと思うからです。
取材に慣れていない人は、
「何を話せばいいんだろう」
という状態になっていることがあります。
そこでこちらも質問票を淡々と読み続けるより、私は仕事として構えすぎず、友達と話すようなテンションに近づけています。
話が盛り上がってくると、
「実はこういう話もあって」
「こういうこともあったんだよ」
と、だんだん予定していなかった話が出てくることがあります。
インタビュー調査に関する資料でも、相手が話しやすい関係をつくることや、相手の話をよく聞くことは重要な要素として扱われています。
予定外の話を拾うために、取材時間には余裕を持つ

どれだけ面白い話が出ても、時間がなければ掘れません。
そのため私は、実際には1時間もかからなそうな取材でも、1時間半程度は確保することが多いです。
先方にもあらかじめ伝えて、その時間でスケジュールを取ってもらいます。
もちろん「取材は1時間半取るべき」という意味ではありません。
私自身が、予定外の話が出たときにもう少し聞けるようにしているだけです。
最初からスケジュールに余裕があれば、
「これ、もう少し聞きたいな」
と思ったときに、その話を追いやすくなります。
深掘りすることより、取材相手を優先する
ただし、面白そうだからといって何でも聞き続けるわけではありません。
取材中に、
「もうこの話はしたくなさそうだな」
「今、時間を気にしているな」
と表情や様子から感じたら、私は切り上げます。
最優先にすべきなのは取材先の人だからです。
話題を変えたいときも、いきなり遮るのではなく、
「実はこういう話も聞きたかったんですけど」
というように、別の話へ移ります。
いい記事を書くために深掘りすることと、相手が気持ちよく話せる範囲を守ることは、どちらも必要だと思っています。
いいインタビューは「その人だから話せること」を拾うことが大切
私が取材で大事にしているのは、質問リストを全部聞けたかどうかではありません。
相手がどの言葉を強く話したのか。
本人が何気なく流した話の中に、面白いものはなかったか。
予定外でも、もう少し聞いてみたい話はなかったか。
そういうところから、ネットで調べただけでは出てこない、その人自身の経験やエピソードを拾っていきます。
質問を準備することは必要です。
でも、準備した質問以上に大切なのは、目の前の相手の話をちゃんと聞くこと。
そして気になる一言が出てきたときに、予定から少し外れてでも、その続きを聞けること。
それが、私がインタビューで相手から話を引き出すときに一番意識していることです。
